仏教の未来

フィンテックの次はテラテック? 仏教界を揺るがす「寺×テクノロジー」の波

2016/11/17

 

「テクノロ寺ー」の時代が来る?

こんにちは、副住職のみずきです。そういう時代なのでしょうか。最近どこもかしこも、口を揃えて「IT化」「IoT」「テクノロジー万歳」といった感じですよね。

近頃「IT」という言葉は「非IT分野×IT」という文脈で語られることが増えてきました。例えば、金融(finance)×IT(technology)なんかは「フィンテック」という言葉がキーワードとなって大きな話題を呼んでいますよね。今までパソコンの中だけの話だった「IT」が、パソコンを飛び出しこの世界のあらゆるものに侵食していく時代に入った、と言うことができます。

あらゆるものがIT化していく時代。IT化の対象に限界はありません。「自動運転の技術で交通がIT化」とか、「ドローンの技術で運輸がIT化」など、すべて同じ文脈での出来事だと言えます。

さて、本題へ。世界を騒がしているIT化の波ですが、もしかして仏教にも……。まさにフィンテックならぬ、寺×テクノロジーで、テラテック!?今回はITの力で変わる仏教や寺院の未来を考えてみました。

 

寺×テクノロジーの現在

思うに、いま仏教はテクノロジーを受け入れるか否かの間に立っています。ここ最近ではIT化とまでは言えませんが、文明の力を取り入れる寺院が増加してきました。卒塔婆専用の印刷機なんかは有名な話ですよね。そこで、仏教×テクノロジーの未来を考えるにあたって、まずテラテックの現在地点を確認してみましょう。

 

寺×自動化

まずは「自動化」のテラテックです。ここでは自動化に関する2つのテラテックをご紹介します。

 

① 読経の自動化:ロボット和尚

やっぱりシーンとしたお寺の本堂よりも、絶えずお経の声が聞こえる本堂の方が「お寺らしい」ですよね。と言っても、和尚さんが一時も休むことなくお経を唱え続けるなんて現実的には難しい…。そこで、ロボット和尚の登場です。

■叩いている様子

見た目はちょっとアナログ感漂ってますけど、後ろのラジカセの音に合わせて木魚(鉦)を叩いているのだそうです。これ地味だけどすごいテクノロジーだと思いませんか?

課題:本堂に絶え間なくお経を響かせ続けたい

解決方法:自動木魚打ちシステム

 

② 鐘つきの自動化:全自動撞木

寺の境内に響く鐘の音は風情があります。しかし、お寺を運営する身としては、定時に毎回鐘を鳴らさないといけないとなると、それはかなりの負担に。そこで、このマシーンの出番です。

■ついている時の様子

音も立てず静かに動く姿にどこか趣が感じられます。そして、その静寂を打ち消すかのような衝動的なプッシュ。マシーンから伝わるそこはかとない諸行無常感は流石としか言いようがありません。

課題:定期的に鐘の音を鳴らしたい

解決方法:自動鐘つきシステム

 

 

寺×電子化

次に、「電子化」のテラテックです。電子化とは簡単に言えばインターネットを駆使して現実の問題をWeb上で解決しようとするもの。ここでは、電子化のテラテックを2つご紹介します。

 

① お賽銭の電子化:Edy払いができる神社

「神社だからテラテックじゃない」なんて言ってはいけません。賽銭箱を置いているお寺も多いので今回はテラテックの一つとカウントします。

今やお賽銭も電子マネーで支払う時代に…。これ見て、どこのサイバーパンク?と思うのは私だけではないはず。とは言ってもこの神社、ただカッコイイから電子マネーにしたわけではありません。

お願い事をするのに寺社仏閣に来たけど、500円しか小銭持ってなかった!っていうような経験はありませんか?500円玉を入れるのはもったいない気がするし、友達から借りて入れるのもご利益がなくなりそうだし……。そんな時、電子マネー払いができると、小銭の有無にかかわらず好きなだけお金を投入できます。

また、お賽銭がたまると怖いのが賽銭泥棒。電子マネーにすれば、泥棒から賽銭を盗まれることはありません。

課題:

・(参拝者)運悪く小銭を持ち合わせていないけど、お賽銭を入れたい

・(神社)お金が貯まると賽銭泥棒が心配

解決方法:お賽銭を電子マネー支払いに

 

② お墓の電子化:ネット墓地

墓地管理者とお寺は独立している場合が多いですが、お墓を仏教と切り離して語ることはできないのでテラテックとして一緒に取り上げます。

故人を偲ぶためのモニュメントとしてお墓はあったほうがいいけど、実際にお墓を作るとなると結構なコストが……。土地を買うのも墓石を作るのもお金がかかっちゃうし、お墓参りに行くのも時間がかかって大変。そんなお墓の問題をテクノロジーで解決したのがネット墓地です。

写真のようにウェブ上にお墓を作ってもらう事で、パソコンさえあればいつでもどこでもお墓参り可能に。しかも、サイドに設置されている花や水をクリックで動かして、お供えすることもできます。グラフィックの少々チープな香りは否めませんが、革新的なサービスだと言えます。

課題:

・お墓の土地代、墓石代が高価

・お墓参りが大変

解決方法:WEB上にお墓を作る

 

以上、4つの例をあげました。テラテックの現在地点、ご理解いただけましたでしょうか?テクノロジーを導入しているお寺(神社)が少なからず存在することが分かったかと思います。

さて、これらのテラテックは皆さんの目にどのように映るのでしょうか?おそらく賛否両論のことだと思います。「文明の力を借りずにお寺は昔ながらの姿のままあるべきだ」とか、「いやいやお寺だって運営するのが大変なんだから文明の力を少しは借りたっていいじゃないか」とか、いろんな意見があることでしょう。

思うに、昔からのお寺の文化すべてを新しいテクノロジーに置き換えることは現実的ではありません。例えば、現実の墓地をすべて撤去して代わりに全部ネット墓地にする、なんてことができるお寺なんておそらくないでしょう。やはりお寺=「昔ながら」という期待がある分、それから逃れることはこの先になってもできないものと思われます。

では、テラテックはちょっとしたイロモノ扱いのまま終わってしまうのでしょうか?

私個人的にはそうとは思いません。テラテックはおそらく今までの寺の文化を代替するのではなく、拡張する形で促進されていくのではないかと思います。つまり、昔の形を残しながら、お寺に求められるさらなるニーズに応えるために、テラテックを導入するお寺が増えてくるのではないでしょうか。

 

寺院×テクノロジーの未来

最後に、未来のテラテックとして、私も新しいテラテックを一つ思いついたので、ここで披露させていただきたいと思います。その名も「Webで御祈願システム」。

ここが勝負という大一番、神社やお寺に赴いてお賽銭を投げ入れ、お願いごとをしたくなりますよね。ただそれと同時に、人生はいつだって勝負の連続。例えば、プレゼンの前に毎回寺社仏閣に通って願い事をするような時間はありません。

それがもしもweb上で、しかも、ほんの10秒で、誰でも気軽にご祈願できるとなるとどうですか?プレゼンの10秒前に、センター試験会場の廊下で、願い事をお祈りすることができれば・・・?寺社仏閣が世界中のすべての勝負師の力になれるかもしれません。

課題:実際に神社やお寺に行かなくてもお賽銭を入れて祈願したい

解決方法:Webとリアルをつなげていつでもお賽銭投げ入れ体験ができるようにする

 

※参考にしたのは、この株式会社OROさんが正月の企画でやっていた「水中参拝」というwebサービス。

残念ながらもうサービスは終了しているのですが、私が覚えている限りの事を書くと、

1、Web上の「水中参拝をする」というボタンを押す。

2、すると、本社に設置された水槽の中のおもちゃの船が動き出す。この様子はwebページ上で生中継されている。

3、船は水中に設置されたミニチュアの神社の賽銭箱に向かって進んでいく。船にはコインが装着されていて、賽銭箱にコインが投下される。

という仕組み。まさにWebとリアルの融合ですね。

 

さて、「Webで御祈願システム」は以下のようなサービスになっています。

テラテック1

ウェブページが存在し、「お賽銭を入れる」ボタンを押すと、電子マネーの支払いページに飛び、最低1円〜最高10000円までお好きな金額を指定することができる。

テラテック2

金額を指定すると、ネット中継(Ustreamなど)の画面が映し出され、映像が自動再生される。

一方、お寺の賽銭箱の上にはweb上での課金をスイッチに作動する機械が設置されている。その機械にはあらかじめお金がストックされていて、課金があったことを確認してお金を賽銭箱に落とす仕組みになっている。体験者はお金が賽銭箱に落ちる光景がリアルタイムに画面に映し出されるので、それを見てお願い事をすることができる。

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さて、「Webで御祈願システム」いかがでしょうか?不安な時にいつでもどこでも誰でも神頼み・仏頼みができる仕組みです。Webとリアルを結びつけるテクノロジーにより、お賽銭体験が今までとは全く別のものになるのではないでしょうか。

このように、テラテックはお寺の可能性を拡張する一つのツールにもなりえるのではないかと思います。

しかし、先述している通り、気をつけなければならないのがお寺には”変わってはいけない部分”があるということです。本来持っているお寺の価値を損なわせるテクノロジーなど元も子もありません。大事なのは「お寺に何が求められているか?」ということを見誤らないことでしょう。

まだまだ考え次第では、テクノロジーの介入の余地がありそうなお寺界隈。はたしてテラテックの時代は来るのでしょうか?

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